バラントレーの若殿 The Master of Ballantrae(1889)
スコットランドの名門バラントレー家の後継ぎたるべきジェイムズは凶暴で用意に人を信じない青年であり、その弟ヘンリーは、静かな正直な人間であった。兄は不吉な賭けによって1745年チャールズ・エドワードの部下に投じ、カロドンの敗戦後、失踪して、もはやこの世の亡きものと信じられていた。さまざまな冒険の果て、お尋ね者となって邸に戻ってくる。そして、弟に父の位を継がれ、許婚の美しいマリリン・グレイムをも奪われ弟の妻になっていることを知る。ここに生涯にわたる怨念と迫害が始まる。まず生家で、続いてアメリカで、兄弟は憎しみ、争い、呪い合う。今やヘンリーも兄に劣らぬ復讐の鬼と化していた。

It was not long before I began to get wind of the causes that so much depressed him. Indeed a blind man must have soon discovered there was a shadow on the house, the shadow of the master of Ballantrae. Dead or alive( and he was then supposed to be dead) that man was his brother’s rival--- his rival abroad, where there was never a good word for Mr. Henry and nothing but regret and praise for the master, and his rival at home, not only with his father and his wife, but with the very servants.
(まもなく私は彼を大層悩ましている原因の気配が分かり始めた。実に盲目でさえもその舘には影が、バラントレーの若殿の影があることがすぐにわかったに違いない。死んでいるにせよ、生きているにせよ(当時は死んでいると思われていたが)その男はヘンリーの敵で、海外にいる敵であった。海外ではヘンリーに対するいい話はなく、若殿には後悔と賞賛があった。国内では父、妻だけでなく、召使さえも精通していた。)

底を割ると、俺はかなりの悪人だ。前任ずらは退屈でやりきれない。

He sits in my place, he bears my name, he courts my wife; and I am here alone with a damned Irishman in this tooth-chattering desert! Oh, I have been a common gull!.
(奴は俺の場所に座り、俺の名前をかたり、俺の妻に求婚している。俺は一人いまいましいアイルランド人と二人で歯がガタガタいう荒野にいる!まさにかもめと同じだ!)

私は、ただ物の名と影を背負っているだけだ。影だけだ。

俺だって兄貴には劣りはしない。兄以上に人間なんだ。

同じ母上の子として生まれながら、親から頂いた命に背くつもりですか。

But the whole thing marked a change, very slight yet very perceptible and though no man could say my master had gone at all out of his mind, no man could deny that he had drifted from his character.
(しかし、万事につけて変化が出てきた。またかすかに感じられるだけであったが。誰もヘンリーは気が狂ったとは思わないが、彼が性格が変わったことは否定しなかった。)

人生というものは、考えてもどうにもならないことを考えて、大部分過ごしてしまうものである。

Your brother is a good man, and you are a bad man.
(弟様は善人で、あなたは悪人だ。)

James---悪と憎しみ。陽気、機敏、短気、敏腕家、幼稚、人気、戦闘的。

Henry---善と愛。陰気、優しい、正直、堅実、忍耐強い、不人気。

しかし、ついに起きた2人の決闘をさかいに、ジェームズはヘンリーに、ヘンリーはジェイムズに近づいて行く。最後にはヘンリーとジェイムズは同一になり死んでしまう。ここでもハイド氏がジキル博士に打ち勝ったように、またしても「悪」が勝利を得る。

妻や愛人を他の者に奪われると我々は憎しみを抱く。時には奪われる可能性があるだけで憎しみを生じる。自分の愛人、妻は自分のものである。」これが他人に奪われたり、奪われる可能性がある時、嫉妬が生じる。

嫉妬は3人の間の関係であり、3<角関係である。弟が生まれて母がその世話ばかりする時、兄は嫉妬する。

自分の愛するものを奪われたという観念。これは本当のこともあり、全く想像だけのこともある。

不安、恐れ、悲しみ、憎しみを含んでいる。自分の人格、名誉、社会的自我を傷つけられた劣等感。騙されたことに対する怒りより、信じたいという間違いに対して耐えられないことがある。(欲求不満の感情)

嫉妬の原因は不安である。神経質は人は、妻や恋人に愛情を独占できなくなるのではないかという不安を持つ。

分裂質の人間は非社交的、内気、でしゃばらず、控えめである。あるところでは敏感でありながら、別のところでは、はなはだ鈍感である。人前では話のできない人が意外とあつかましい。

敏感型---神経質であり、そのため人間との接触をさけ、自然を友とし、読書を好む。

鈍感型---周囲のことにあまり関心を持たず、従順で、お人よし。(2009.3.17)

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